【大平温泉 滝見屋】4月~10月の半年限定 歩いてしか行けない本当の秘湯

更新日:2025年10月01日

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大平温泉滝見屋の外観(紅葉)

こんにちは。秘湯に行きたいと思いつつ、ついつい近場にばっかり出かけてしまう筆者です。「秘湯」って響き、良いですよね。無性に旅に出たくなります。

今回は最上川源流と言われる「火焔(ひほえ)の滝」を撮影しに行き、滝のそばにある秘境の一軒宿「大平温泉 滝見屋」さんに日帰り入浴してきました。

行く前の筆者は「秘湯といっても人が管理してるわけだし、アクセスはそこまで大変じゃないでしょ。五色温泉のときも意外と楽だったし」と思っていました。甘かったです。大平温泉に行きたい皆さん、ぜひ足腰が元気なうちに行ってください。というか、足腰が元気じゃないと行けません。

大平温泉は雪が無い4月~10月の半年しか営業しない、まさに秘湯。

今回は滝を見に行くまでと入浴レポートを一緒に書いていますので、入浴レポートだけ見たい方は目次から飛んでください。

(注意)2025年9月現在、修繕工事のため日帰り入浴は行っていません。宿泊利用だけになっています。

目次
  • すれ違えない山道ドライブ
  • 温泉までの試練
  • 川の真横 自然と一体になれる露天風呂
  • 坂だらけの「大平」
 
五色温泉のプロフィール
場所 山形県米沢市の南(市街地から車で約50分)+駐車場から徒歩約20分
アクセス 自家用車もしくは送迎車(宿泊者限定)で駐車場まで。駐車場からは徒歩のみ(急勾配)。
宿泊場所 大平温泉 滝見屋のみ(例年11月初旬~4月下旬は降雪のため休み)
主な歴史

- 860年(貞観2年)開湯
- 1801年(享和元年)滝見屋開業(浴舎のみ)
- 1909年(明治42年)旅館を始める
- 1926年(大正15年)暴風雨で旅館・源泉に致命的被害。山を切り崩して300坪の工事に着手
- 1934年(昭和9年)工事完了
- 1938年(昭和13年)旅館全焼。戦時中のため旅館は贅沢品とされ建築許可下りず
- 1940年(昭和15年)親族会議により廃業の危機

泉質 カルシウム-硫黄塩泉(低張性中性高温泉)
放流方式 源泉かけ流し(無加温・無加水)

プロフィールがハード…。文字だけだと分かりづらいですが、あの山奥に旅館を作るだけでも大変だろうに2度も再建してるのすごすぎる。

大平温泉にたどり着くまで

すれ違えない山道ドライブ

ここは米沢市の良いところを発信するウェブサイトですが、良いところだけ書くのはフェアじゃないのでキツイところは正直に書くのが筆者のモットーです。毒にも薬にもならないサクラ記事はNG。

さて、まずはこちらのGoogleストリートビューをご覧ください。

こんな道が約6km続きます。「対向車なんて来ないだろ」と思っていたらコーナーで対向車が来て心臓がキュッってなった。徐行って大事ですね。

待避所っぽい場所まで移動してなんとかすれ違いました。お互い軽自動車だったから良かったですが、普通車2台だったらすれ違えなかったかもしれません。ミニバンなんてもってのほか。

筆者は運転好きですし、こういう激セマ山道も10分くらいならアトラクション気分で楽しく運転できるんですが、20分くらい運転してるとしんどかった。でも楽しいこともありまして、道中でリスが目の前を横断していきました。カワイかったなあ。

駐車場に車を止めて、徒歩で宿に向かいます。

温泉までの試練

さあ、問題はここからです。旅館はこの先にあります。このときの筆者は「まあ普段から運動してるし、まだ若いし余裕でしょ」と秘湯への期待感もあって口笛なんて吹いちゃってました。

滝見屋までの道のり

ん?

滝見屋までの道のり

この道で合ってる?

崖

おお、地面が崩れて根がむき出し。

滝見屋までの道のり

いや長い長い。この先に文明ある?

荷物を運ぶためのロープ

突然の文明開化。このワイヤーロープで宿泊者の荷物を旅館まで運ぶらしい。本来の用途は建材や備品の運搬でしょうね。

滝見屋までの道のり

ワイヤーの先に建物が見えた!

滝見屋までの道のり(清流)

キレイな川~。

滝見屋までの吊り橋

この吊り橋を渡れば「滝見屋」に着きます。

ここまで約20分。急傾斜の下り坂を歩き続けて、太ももがプルプルしています。汗だくです。

さて、勘の良い人ならお気づきでしょうが、帰りは「上り坂」です。ここまで来て気づいてももう遅い。

ちなみに筆者は軽い高所恐怖症ですが、もうここまで来たら高所恐怖とか関係ないです(この急坂を引き返す元気もない)。覚悟を決めて吊り橋を渡るぞ。

大平温泉滝見屋の外観

はい、こちらが「滝見屋」さん(画像は工事前のもの)。

この山奥の、川の真横にこんなちゃんとした建物が…? どうやって作ったんだろうか。険しい岩場に建物をギュッと詰め込んだ様子はギリシャの世界遺産メテオラを思い起こさせますね。

1回建てるだけでも大変だろうに何度も建て直してこの秘湯を維持している一族のみなさんには尊敬の念を覚えます。

ちなみに、このあたりで筆者のスマホは圏外になりました。

火焔の滝見学

さて、さっそく温泉に入りたいところですが、我々がここに来たのは「火焔の滝」の撮影が目的。

「火焔の滝」は大平温泉で唯一と言っても過言ではない観光名所で、行く元気があれば誰でも行けます。滝を見に行く場合は宿の人に一声かけください。

「火焔の滝」に行くには、この川をさかのぼります。沢登りです。

火焔の滝に向かう川

岩が大きいうえに岩と岩の間が空いているので、川に足を突っ込むかジャンプする勇気が必要。

増水した川

(´・ω・`; )えぇ……どこ渡るのこれ。

突然視界が開け足場が消失しました。

どうせこのあと温泉に入るし、水は間違いなくキレイなので川の中じゃぶじゃぶ行こうかと思いましたが同行者に止められました。実は2日前まで大雨が降っていて、我々の想定よりも増水していました。初心者が強行すると事故になりそうなので撤退です。悔しい。慣れてる人なら長靴はいてじゃぶじゃぶ進むらしいです。

どうにか滝を撮影できないか聞いたところ、少し山を登ったところから滝が見えるとのことだったので、作戦変更です。沢登りは止めて山登りです。筆者、実は富士山登頂経験がありますし、最近は吾妻山に登っています。ここも吾妻山の一部みたいなものなので余裕でしょう。

登山道の案内板

なんだ、宿の手前に登山道の案内があったじゃないか。この先に登山道が…

登山はしご

…(;゜∀゜)?

(・ω・。)キョロキョロ(。・ω・)えーっと、登山道はどこかな?

(*゜ー゜)

登山はしご

これかあ……。

繰り返しになりますが筆者はちょびっとだけ高所恐怖症です。いくら滝を撮りたいからといってこんなハシゴを登ってまで撮影なんて…

はしごをのぼる人

うおおおおおおおおお!

火焔の滝を遠くに見る

うおおおおおおおおおお!

火焔の滝を遠くに見る

見えた!キレイ!これが最上川源流の「火焔の滝」です。帰りはハシゴを下りなくちゃいけない恐怖なんて忘れるくらいキレイ!

これはぜひ間近で火焔の滝をリベンジしたいですね。

ちなみに近くで見るとこんな感じです(提供素材)。

火焔の滝

マイナスイオンすごそう。滝だけを見るとスラっとしていて、白いドレスのような優雅な佇まい。ですが、周囲のゴツゴツした岩と、岸壁にしがみつくように生える草と合わせて見ると自然の力強さを感じます。見方によって印象が違っておもしろい滝だ。

さて、滝を間近で見られなかったのは残念ですが、気持ちを切り替えて温泉に入りましょう(ワクワク)。

大平温泉の入浴レポート

川の真横 自然と一体になれる露天風呂

「大平温泉 滝見屋」には4つの露天風呂(男湯、女湯、貸切2カ所)と2つの内湯(男湯、女湯)があります。今回は露天風呂に入浴しました。

露天風呂は川沿いに並んでいて、通路手前から男湯、女湯、貸切風呂となっています。

こちらが露天風呂(男湯)の入り口ですが、筆者は初めて見た時笑ってしまいました。

大平温泉滝見屋の露天風呂

お分かりでしょうか?

通路からこの一瞬だけ風呂が見えるんです。ビックリ。露天風呂に行く際は視線を右側に向けながら進んだ方がお互いのためです。オープンなのは男湯だけなので女性のみなさんは安心してください。

ロビーから見える露天風呂

ちなみにこれはロビーの端っこにある窓からの景色。男湯丸見え(笑)。ただ、この圧倒的開放感のおかげで男湯は遮るものがない露天風呂を楽しめるのです。

脱衣所は撮り忘れました。木の棚にカゴというシンプルなものです。

露天風呂にはシャワーがないので、かけ湯オンリー。

いざ入浴!

大平温泉男湯からの眺望

うひょおおおおお! 新鮮なお湯がドバドバ噴き上がってくるぜえ。

この噴水、いや噴湯は男湯だけに設置されています。これが楽しめるなら多少オープンになっていても問題なし。むしろオープンであるがゆえにこの噴湯が映える。

大平温泉男湯からの眺望

すぐ横を川が流れています。川の音と温泉が噴き出す音以外に何も聞こえません。大自然です。紅葉の時期はもっと絶景でしょう。

大平温泉男湯からの眺望

ふんわりと香る心地よい硫黄臭で、細かい湯の花が舞っています。

中性・低張性の温泉なので、肌触りはさっぱりと優しめ。化粧水いらずの湯と言われていますが、そのとおりの質感。温泉成分がじんわりと肌に浸透している気がします。

この数日雨が降っていたためか、湯温は適温寄りのぬるめ(体感39~40℃くらい)で、ずっと入っていられる温泉でした。

泉質の好みは人それぞれですが、間違いなく1つ言えることがあります。大平温泉にたどり着くまでの苦労(坂道歩き)が良いスパイスになって、総合的な温泉満足度がすごい高い。「ここでしか入れない秘湯」感が満足度を引き上げています。

秘湯というのは「湯」だけを楽しむのではなく、移動も含めたエンターテインメントなのかもしれません。

気持ちよ~く20分くらい入っていたのですが、これが後の悲劇を引き起こすとは知る由もなかった

坂だらけの「大平」

大平温泉からの帰り道

帰るために、この坂道を20分かけて歩きます。

温泉でポッカポカになった身体で。

汗だらだらで、車についてすぐに冷房マックスにしました。

だれが大平なんて地名にしたんでしょうね。氷だらけの島なのに人が来るようにグリーンランドって名付けたみたいなものでしょうか。坂だらけなのに大平。

みなさんは湯上り後すぐに帰らず、ちゃんと落ち着いてから帰ってください。

まとめ:行けるうちに行かないと一生行けなくなる秘湯

「秘湯」という言葉には旅情を誘う不思議な力があります。

交通網が発達した現代では「秘湯」と呼ばれる温泉も「ちょっとアクセスが不便」程度になりました。

そんな中で、自分の足を使わないと行けない大平温泉は、間違いなく本物の「秘湯」です。ネットは繋がらず、テレビも見れません。電気は自家発電です。冬は雪が深すぎて休業。

日常生活の感覚でいえば間違いなく「不便」。でも、そんな不便を「ロマン」に変えてくれるのが秘湯・大平温泉かもしれません。