1200年の歴史をもつ米沢の夏の風物詩・愛宕の火祭り
「愛宕の火祭り」とは
米沢の南西に広がる斜平山(なでらやま)の中ほどに、静かにそびえる愛宕山。その山頂には、古くから地元の人々に信仰されてきた愛宕神社があります。そして山の麓には、隣の羽山にある羽山神社と合祀された「愛宕羽山両神社」が建っています。
毎年8月2日に行われる愛宕羽山両神社の例大祭。その前夜に開催されるのが「愛宕の火祭り」です。
松明の火が、市の目抜き通りから愛宕山麓の地蔵園に設けられた大火壇に運ばれます。
御神輿を山へと運び上げる神事では、数百本の松明が夜の闇を照らし、神の力が松明に宿ると伝えられています。その光に守られながら、子どもたちは無病息災を願い行列を進みます。
その歴史は、1200年も前にさかのぼることができます。
*合祀:複数の神や霊を集めて一緒に祀ること。
愛宕の火祭りの起源~愛宕神社神事としての1200年の歴史~
“愛宕”の名の由来にもなった愛宕神社は、標高559mの愛宕山の山頂に建てられ、火の神・軻遇突知命(カグツチノミコト)を祀っています。
神事の火祭りから民衆の火祭りに
愛宕の火祭りは、元々神事の火祭りとして大同2年(807年)の神社創建から始まり、1400年頃からは領民も加わるようになったことで、次第に民衆の火祭りへと変遷してきました。
また、武士の信仰が厚かった愛宕信仰を元とした愛宕神社は、上杉家に大事にされてきました。
上杉景勝公は慶長6年(1601年)に会津から米沢に入城し、3年後の慶長9年(1604年)には愛宕羽山両神社の社殿を建て替え、愛宕の尊像を神璽(しんじ)*として神社に奉納したといわれています。
3代目定勝公が社殿修造、4代目綱勝公が社殿再建も行いました。
9代目治憲(鷹山)公の頃には、領民が干ばつによる不作に苦しんでいることを受けて治憲公が愛宕山の山頂で雷を呼ぶために火の神に雨乞い祈願をした結果、日照り続きの田畑に雨が降ったという逸話も残っています。翌々年は家臣と共に、その後は農民や町方の家臣にも呼びかけて愛宕山への登拝が続けられたといいます。今も鷹山公雨乞いの遺跡には昭和48年(1973年)に建てられた鷹山公雨乞之碑が残っています。
さらに14代目茂憲公は、景勝公が大阪の陣で徳川勢に加勢した時、戦功により徳川家康から賜ったと伝わる米沢城の大太鼓を愛宕神社に奉納しており、その大太鼓は現在も使われています。
戦中には一時中断されたものの、昭和56年(1981年)に多くの希望の声から復活し、今に続いています。
神事として1200年、民の祭りとして600年、米沢を象徴する伝統行事として今も受け継がれています。
*神璽:神社の御神体のこと。
伝統を受け継ぐ愛宕の火祭りの流れ
愛宕の火祭りは、主に8月1日早朝から愛宕神社を参拝する「民衆登山」から始まり、夕方には市内にある松岬神社から地蔵園(愛宕羽山両神社)まで参加者数百名が練り歩く「松明行列」が、夜には麓から山頂までの「神輿本宮発輿」が行われます。
※コロナ禍を経て、2020~2023年は関係者のみで実施、現在も規模を縮小しており、実施していない催しもあります。
7月31日
-夕方-
- 愛宕マラソン(関係団体主催のイベントです)
8月1日
千日詣(せんにちまいり)
7月31日夜〜8月1日早朝にかけて参拝すれば、千日分の火伏・防火のご利益があるとされる「千日通夜祭(せんにちつうやさい)」。火の神に祈りを捧げる日です。

-早朝-
- 愛宕山民衆登山祭・お神楽・餅まき
昭和28年(1953年)頃から、市民参加の民衆登山が恒例として行われるようになりました。また、農家や商店、夜店でこの日に売られるでんがく餅を食べると夏負けしない、という言い伝えがあります。
-午前-
- 獅子巡行:氏子町内で行われます。
-午後-
松岬神社、地蔵院(愛宕羽山両神社)、愛宕神社にて
- 松明採火式(松岬神社)
- 松明行列出発(松岬神社および旧桂町)
各種団体や小・中・高校生、町内会、その他一般の参加者が、松岬神社で採火された御神火を松明にうつして掲げ、市中心部から愛宕山麓の地蔵園に設けられた大火壇へ行列をなして向かいます。
” 和っしょい わっしょい ”
” おやまははんじょお(お山は繁盛) ”
” ろっこんしょおじょ(六根清浄) ”
” しんたいけんご(身体堅固) ”
” 和っしょい わっしょい ”
上記の「お山繁昌・六根清浄」を唱えて街を練り歩く行列は、3キロメートル近い道なりを歩き続ける大行列となります。
ちなみに、鷹山公の雨乞いの逸話に結び付けて、鷹山公を祀る松岬神社から神火をもらうようになったといわれています。
- 松明行列会場着(地蔵園特設大火壇)
- 前夜祭 愛宕の芝舞台・御神楽奉奏・餅まき(地蔵園)
特設した地蔵園広場の大火壇(約3m四方、高さ3m以上)に燃やした“大かがり火”の周りを、若者達が打ち鳴らす愛宕火焔太鼓に合わせて松明が囲い、六根清浄の群舞が行われます。日本芸能神社が近くにあることもあり、巫女に扮した小学生の踊りや明神太鼓、上杉砲術隊祝砲など様々な芸事が奉納されます。
- 口ノ宮神輿発輿祭
神璽を御神輿にうつす儀式になります。
- 神輿本宮発輿
地蔵園の口ノ宮に安置されている景勝公の神璽を御神輿に遷し、松明・提灯・旗、そしてお山繁昌・六根清浄の掛け声とともに氏子が御神輿を担いで愛宕山山頂の本宮を目指します。500本余の松明による愛宕山麓から山頂までの行列が行われ、到着した後神社で身体の健康と五穀豊穣を祈願します。
- 還輿祭
8月2日
-午前-
- 愛宕羽山両神社例大祭
-正午-
- 神楽奉奏・餅まき
8月3日
- 後鎮祭
愛宕の火祭りMAP

アクセス
・JR米沢駅→車20分
・東北中央道米沢中央ICから国道121号経由約7km 15分
※会場付近に駐車場はありません。
主催・後援
【主催】
愛宕羽山両神社、氏子青年会、愛宕の火祭り実行委員会
【後援】
米沢四季祭り委員会、米沢商工会議所、愛宕の火祭り応援団
更新日:2025年06月06日