東北随一の温泉地、家族旅行から一人旅まで、8カ所の秘湯・名湯
米沢市には、景色も泉質も違う温泉地が8か所あります。名付けて米沢八湯(はっとう)。
冬は雪でたどり着けない秘湯から、車で15分程度の近場温泉、さらにはキャンプ場併設の温泉などバラエティ豊か。お気に入りの温泉がきっと見つかります。
目次
1.市内から車で約15分 「美人の湯」小野川温泉
開湯は約1200年前の平安時代、絶世の美女と伝わる歌人”小野小町”が旅の途中に病気を癒したという伝説にはじまります。そこから「小野川」の名がつきました。
戦国時代には、落馬でケガを負った”伊達政宗”が湯治をしたという記録もあります(伊達政宗は米沢出身。24歳まで米沢に住んでいました)。
湯治場として長い間親しまれてきた小野川温泉。米沢市内から一番近い温泉街で、日帰り入浴がしやすいのもポイント。日帰り入浴は夜9時ごろまで営業しているので、仕事帰りに行くこともできます。
米沢市内では一番大きな温泉地。温泉の効能だけでなく、心も癒してくれる温泉街としての魅力もたくさんあります。
化粧水にも使われる「メタケイ酸」を多く含む美肌の湯
泉質 | 含硫黄 - ナトリウム・カルシウム - 塩化物温泉 |
源泉温度 | 約80℃(第4号源泉)と約35℃(第5号源泉) |
温度調整 | 第4号源泉と第5号源泉のブレンド |
利用方式 | 源泉かけ流し(詳細は各旅館などに確認してください) |
効能 | 神経痛・リュウマチ性疾患・創傷・皮膚病・慢性胃腸病・ 女性慢性炎症・更年期障害など |
PH6.9の中性で刺激の少ない、お肌にやさしい温泉です。
また、肌の新陳代謝を促すなどの効果を持ち、化粧水などにも配合される「メタケイ酸」を多く含む温泉で、科学的にも「美肌の温泉」といえます。
飲泉できる! 身体の中からも湯治
読んで字のごとく、温泉を飲むのが「飲泉」。実は、保健所の許可などの関係で、飲泉を出来る温泉(施設)自体がかなり貴重です。
「結局、効果は同じじゃないの?」と思ったあなた、違うんです。
温泉によって良い効果を得られるとされる病気や症状のことを「適応症」といいますが、浴用適応症と飲用適応症は別なんです。
泉質にもよりますが、浴用適応症は主に関節痛・神経痛・肩こりなどの痛みや、湿疹などの肌トラブル。
飲用適応症は主に便秘や高コレステロールなどの内臓疾患です。
温泉と飲泉で、疲労回復だけでなく体の中から健康になれるかも?
小野川温泉は塩分が濃いので、卵スープっぽい味がします(個人の感想です)。
(注意)飲泉により悪化する症状(禁忌症)もありますので、飲泉前に必ず医師に確認してください
夏はほたるが舞う! 環境省指定のほたるの里
6月中旬~7月中旬、小野川温泉の夜をほたるが彩ります。
温泉街から徒歩5分ほどのほたる公園では、ゲンジ・ヘイケ・ヒメの3種類のホタルを見ることができますよ!
見ごろは20時~21時。キッチンカーも出店するので、日帰り入浴を楽しんだ後、キッチンカーでご飯を食べてほたる観賞なんてどうでしょう?
色々な種類の温泉旅館から選べるあなたに合った宿泊体験
小野川温泉には13軒の温泉宿があります。
小さな湯治旅館から、露天風呂付客室のあるハイクラス旅館まで、あなたの好みにあった旅館がきっと見つかります。
2.おすすめしたい穴場温泉地ベスト30に選ばれた名湯 白布温泉
とある旅行雑誌で「おすすめしたい穴場温泉地ランキングベスト30」に選ばれた白布温泉。奥州三高湯の一つとしても知られています。
開湯は約700年前の鎌倉時代。鷹が温泉で傷を癒しているところを武士が発見したと伝わります。
江戸時代には米沢藩内の代表的な保養地として親しまれていました。
トレッキングやスキーで賑わう天元台高原や西吾妻山などへの拠点でもあります。
旅館1軒あたりで全国でも屈指の自然湧出量を誇る温泉
泉質 | 含硫黄 - カルシウム - 硫酸塩温泉 |
源泉温度 | 58℃~62℃ |
温度調整 | 加水の場合あり(詳細は各旅館に確認してください) |
利用方式 | 源泉かけ流し(詳細は各旅館に確認してください) |
効能 | 胃腸病・慢性呼吸器病・慢性皮膚病・官能性神経疾患など |
白布温泉の自然湧出量は約1,500リットル/分。と言っても、これが多いのか少ないのか分かりませんよね?
日本で1番自然湧出量が多い温泉地は草津温泉で、約32,300リットル/分と言われています。
温泉が湧き出ている量では白布温泉が少ないですが、実は温泉旅館1軒あたりで見ると違うんです。白布温泉は3軒(休業中含めると4軒)の旅館だけで温泉を分け合うので、1軒あたりの湯量では白布温泉が圧倒的に多いんです。
自然湧出量 | 旅館数 | 1軒あたりの湯量 | |
白布温泉 | 約1500リットル |
3(4) |
約500リットル/分 (375リットル/分) |
草津温泉 | 約32,300リットル | 104 | 約310リットル/分 |
豊富な温泉にどっぷりと身体を沈め、日々の疲れを取りませんか?
タイムスリップしたような温泉街が美しい
山の中にひっそりとたたずむ4軒(現在1軒休業中)の温泉宿が作り出す幽玄な雰囲気は、湯治場としての歴史を感じさせます。
温泉街に華を添えているのが、江戸時代から残る茅葺屋根の旅館「湯滝の宿 西屋」。その横には白布温泉のランドマークとして2021年に作られた湯車が佇み、ロマン溢れる景観を作っています。
のんびりからアクティブまで周辺観光が充実
白布温泉は磐梯朝日国立公園の中にあり、とても自然が豊かです。小さなエリアなので、1時間もあれば遊歩道で森林浴を楽しんだり、落差30メートルの白布大滝の美景を楽しめます。
歴史が好きな人は、直江兼続の鉄砲鍛造遺跡の碑を見てはどうでしょう。上杉家が会津から米沢に移封となり、腹心の直江兼続は徳川家と交渉を進めながら戦の準備もしていました。白布の地に火縄銃の製造所を構えたのは、人目を避けて製造するため。また、火薬の原料になる硫黄と、鍛冶に必要な大量の炭の供給を考えたものと思われます。
白布三十三観音と四国八十八ヶ所
白布温泉には2つの霊場があります。
1つは、白布三十三観音。東屋旅館24代当主 宍戸惣佐衛門が、西国三十三観音を巡礼し、分霊を受けて、享保14年(1729年)に建立されました。
庶民の旅行が一般的になるのは1800年頃のこと。それよりも早く建立され、かつ1か所に集めた石造りのものは、三十三観音としては全国的にも珍しいものとされています。
上杉家の歴代藩主も特に心に留められ、機会あるごとにお参りされました。
境内の石灯ろうの一つは、上杉家の寄進と言われています。
もう1つの霊場は四国八十八ヶ所。弘法大師が人々の厄難を除く為に四国を巡礼した際、88の寺を選び霊場にしました。白布には、笹野観音住職が巡礼し分霊をうけた「四国八十八ヶ所」が昭和50年に完成し、安置されています。
天元台高原と西吾妻スカイバレー
白布温泉から車で数分走ると分かれ道が現れます。
1つは天元台高原に通じる道です。ロープウェイの湯本駅まで通じていて、ロープウェイに乗り換えれば天元台高原まで上がっていけます。天元台高原は標高1,300メートルに位置し、避暑地として人気。
アクティビティを楽しみたい人は登山もおススメ。約4時間30分で回れる初心者向けコースなら、9時から登り始めれば宿のチェックインまでに下山できます。
もう1つの道は西吾妻スカイバレー。米沢と福島を結ぶ山岳道路です。その名の通り、スカイ(空)とバレー(渓谷)が作り出す絶景が広がります。ヘアピンカーブの連続区間もあり、ドライブにも最高。愛車を思いっきり走らせてみてください。もちろん、安全運転で。
3.標高1126(いい風呂)メートル。星見風呂が名物 新高湯温泉
白布温泉のさらに上。標高1126メートルに新高湯温泉で唯一の宿「吾妻屋旅館」があります。
源泉かけ流し、しかもポンプを使わず高低差による圧力だけで引湯しており、完全に自然のままの温泉を楽しめます。
雪が降るまで限定の滝見露天風呂など、趣の違う5種類の湯舟が自慢の宿。秘湯好きのみなさんなら気に入るはずです。
(注意)2024~25年に起きた大雪のため復旧工事中(2025年7月時点)。
5つの湯舟と星見風呂
泉質 | 含硫黄‐カルシウム‐硫酸塩温泉(石膏硫化水素泉)(低張性中性高温泉) |
源泉温度 | 約56℃ |
温度調整 | 無加温無加水(真夏は内湯のみ加水する場合あり) |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | 慢性胃腸病・湿疹・神経痛など |
眺望露天風呂が2つ、滝見露天風呂が1つ、貸し切り風呂が1つ、内湯が1つ、合計5つの湯舟があります。
温泉の質はもちろんですが、露天風呂のお楽しみはなんといっても星見風呂。
空にグッと近づいた標高1126メートル、周囲には宿の明かり以外なく、当然空気はきれい。星空を見るのに適した環境で星見風呂を堪能すれば、身も心もリラックスすること間違いなし。
冷房不要! 熱中症とは無縁の環境
一般的に、標高が100メートル上がると気温が0.6度下がると言われます。
米沢市街地は標高250メートル程度なので、標高差は約900メートル。旅館周辺の気温は市街地より5~6度低くなります。
さらに、コンクリートで熱がこもりやすい市街地と比べると、森林に囲まれている山の中は熱がこもりづらく、体感温度差はもっとあるでしょう。
最高気温が25℃を超えることはめったになく、陽が沈むと更に涼やかで爽やかな風が風呂上がりの火照ったからだを癒してくれます。
一番搾りの水が美味い
宿の水源は「西吾妻地蔵倉水源」。西吾妻中腹、標高1,555メートルの岩盤から湧き出るその水は年間を通して同じ水量。
その冷たくて美味しい水は宿泊客に評判。水源に近いからこそできる源流水の一番搾りが自慢です。
日帰り入浴不可。宿泊者限定でのんびり過ごせる
「吾妻屋旅館」では、日帰り入浴ができません。
- 宿泊客にのんびりすごしてもらいたいから
- 湯の総入れ替えに数時間かかるから
山奥まで来てくれたお客さんに快適に過ごしてほしいという宿の心意気が、こういったところから感じ取れます。
4.米沢牛フルコースでお腹いっぱいに!1日10組限定 湯の沢温泉
米沢市の南東、大自然の中の静かなエリアに1軒だけある温泉宿「時の宿すみれ」。
秘湯ではありませんが、米沢牛専門店から仕入れる米沢牛のフルコースなどの特別な体験ができる温泉宿です。
大切な人と「二人だけの時」を過ごすのにピッタリ。
湯あたりしにくい優しい温泉
泉質 | 単純温泉(低張性 中性 低温泉) |
源泉温度 | 約27℃ |
温度調整 | 加温 |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | 外傷/皮膚病/リウマチ/神経病など |
湯の沢温泉は刺激が少なく、体の水分が抜けにくいため湯あたりしにくいと言われます。
温泉は趣が異なるお風呂場が4つ(うち2つは貸切露天風呂)。客室にはバスルームがないですが、お風呂場の数が多いので他のお客さんと鉢合わせすることは少ないです。
おふたり様専用の大人の宿
「時の宿すみれ」では、1人・3人以上の宿泊はできません。
夫婦で、恋人で、友人で、親子で……あらゆる大切な「おふたり」だけの宿です。
おふたりの時間を大切にしてほしいという思いから、部屋にはテレビも時計もありません。時を忘れて過ごす「時の宿」。
米沢のゆったりした自然の中で、大切な人との特別な時間を過ごせます。
十組十色 部屋ごとにコンセプトが違って楽しい
全10室、1つとして同じ部屋はありません。
和洋室が3タイプ、洋室が6タイプ、和室が1タイプあります。
和モダンな客室から、リゾート風な客室までバラエティ豊富。1組1組の好みに合ったお部屋がきっと見つかります。
米沢牛づくしのフルコースが美味しすぎる
時の宿すみれの夕食は「米沢牛づくしの創作懐石」。前菜からシメまでどこもかしこも米沢牛です。この一食で、米沢牛をあらゆる調理方法で食べられると言っても過言ではないかもしれません。
牛肉の仕入れ先は、大正12年創業の老舗「米沢牛黄木」。東京駅や銀座にもお店があるので、名前を知っている人もいるかもしれません。
最高級の牛肉をシェフが丁寧に調理するので、胃もたれすることなくペロリと食べきれます。
5.最上川源流の「火焔の滝」を眺める THE秘湯 大平温泉
米沢市街地から車で約45分。さらに駐車場から急な下り坂を20分程度歩き、つり橋を渡るとようやく宿にたどり着きます。秘湯好きなみなさん、ぜひ足腰が元気なうちに訪れてみてください。きっと気に入ると思います。
大平温泉唯一の宿「滝見屋」。渓流の上に突き出すように建っており、こんな山奥の、あの足場にどうやって建てたのか、その様子はまるでギリシャのメテオラ修道院を彷彿とさせます。
電波が届かないデジタルデトックス環境で、現代社会のしがらみから解き放たれて本当の自分を取り戻しませんか?
胃腸によく効くと言われる滝見の名湯
泉質 | カルシウム-硫黄塩泉(低張性中性高温泉) |
源泉温度 | 約63℃ |
温度調整 | 無加温無加水 |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | 胃腸病・高血圧・神経痛・リウマチ・皮膚病・便秘など |
開湯は貞観2年(860年)、狩人によって発見されたと言われています。
古来より胃腸に効くとされ、硫酸塩泉の新陳代謝促進効果により化粧水いらずの湯とも言われます。
温泉は、男女別の露天風呂が1つずつ、貸切露天風呂が2つ、男女別の内湯が1つずつの計6つ。露天風呂と内湯で異なる源泉を使用。
露天風呂は周囲を木々に囲まれていて、森の息吹を全身で感じることができます。内湯からは「火焔の滝」を見ることができます。
源泉かけ流し(無加温無加水)のため、雨が降った後は温度が下がり、雨が降らないと熱くなります。人の手が入らない自然の営みそのままをお楽しみください。
日帰り入浴も可能ですが、宿泊状況により不定休なので宿にお問い合わせください。
雪が降ったら営業終了 テレビ・スマホの電波が届かない秘境
大平温泉はテレビやスマホの電波が届かない深山幽谷の一軒宿。雪が溶ける4月下旬~雪が降り始める前の11月上旬までの半年しか営業しません。
デジタルデトックスという言葉が生まれたように、現代人は過剰な量の情報を毎日浴びています。
「スマホを手放したくても連絡がきて手放せない……」とお悩みのみなさん、強制的に電波が入らない環境に身を置いてみませんか?
温泉で身体を休め、デジタルデトックスで脳を休める。そんな休息が、現代人には必要かもしれません。
山河の恵みと郷土料理、米沢牛もついた夕食
山形の文化を育む最上川。「滝見屋」はその源流である「火焔の滝」のそばにあります。山形が始まる地で取れる川魚、米沢の食文化に根付いた「かてもの」と呼ばれる野菜・山菜、そして米沢旅行で外せない米沢牛。「滝見屋」の夕食では、山形そして米沢を丸ごと楽しめます。
お酒好きな人は、焼いたヤマメが1匹丸ごと入った熱燗もおススメ。ヤマメの出汁が沁み出して香ばしいですよ。
自然に没入する楽しみ
デジタルから離れ、何もしない贅沢を楽しむのも良し。大自然に足を踏み入れるも良しの大平温泉。
川のせせらぎをBGMに読書をすれば、文章がいつもよりスッと頭に入ってくるかもしれません。
宿から徒歩10分ほど川をさかのぼれば、より近くで最上川源流の滝「火焔の滝」を見ることができます(長靴や登山ブーツ着用がおすすめ)。
天元台方面に登山をすれば、神聖なミズナラの大木に出会えます。
深緑の時期と紅葉の時期では、違った美しさに出会えるでしょう。
6.ミルキーブルーの酸性硫黄泉が美しい秘湯 姥湯温泉
山形県で一番標高の高い1250mにある温泉。大平温泉が木々に囲まれている印象なのに対し、姥湯温泉は岩山に囲まれている印象で趣が異なります。
そびえ立つ絶壁とむき出しの山肌、そして点在する樹木が作り出す山水画のような風景は「ここは本当に日本か?」と思わせる迫力があります。
姥湯温泉唯一の宿が「桝形屋」。
その場所はまさに秘湯。市街地から車で1時間。途中から舗装されている細い山道を約7.5キロメートル進みます(送迎サービスあり)。屹立する断崖を背に急峻な谷間に建つ宿は山奥にあるとは思えない立派なもの。
これぞ秘湯! という濁り湯と、ここが秘湯!? という滞在を楽しめます。
こちらも大平温泉と同じく冬期は休業です。
美しいミルキーブルーの硫黄泉
泉質 | 単純酸性硫黄温泉 |
源泉温度 | 約51℃ |
温度調整 | 無加温無加水 |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | アトピー性皮膚炎・慢性湿疹・尋常性乾癬・糖尿病など |
開湯は天文2年(1533年)。鉱山師として山々を渡り歩いていた男がこの温泉を発見し「桝形屋」を開業。現在の当主で17代目になります。
姥湯温泉の泉質は単純酸性硫黄温泉。硫黄成分は、肌の古い角質を溶かす効果や、殺菌効果があるため、肌トラブルの改善や美肌効果が期待されます。トロリとした感触が特徴で、よくあたたまります。
温泉としての効能はもちろんですが、青みがかった乳白色の温泉に日光があたると幻想的な光景が広がり、視覚的なリラックス効果も。
お風呂場は男女別の内風呂が1つずつ、女性専用露天風呂が1つ、混浴露天風呂が1つの計4つ。女性専用露天風呂は木々に囲まれた緑の多い景観に対し、混浴露天風呂はむき出しの山肌が眼前に迫るワイルドな景観です。
昼も夜も絶景が楽しめる露天風呂
姥湯温泉はV字の谷底にあるので、迫りくる山肌の存在感がありながら、見上げれば空が広く感じます。谷の比較的真っすぐな部分に宿があり、抜けるような谷底の光景はいつまでも見ていられる絶景です。
昼は地球の声が聞こえそうなダイナミックな渓谷美を楽しめる姥湯温泉ですが、夜は違った顔を見せます。
標高1250mの山奥。夜は足元が見える程度の明かりしかないため、見上げれば降ってきそうな満天の星空。
もし天気が悪くても、渓谷を覆う雲や霧があなたを幽玄な世界へ連れて行ってくれることでしょう。
山奥にありながら不便じゃない
かつては山小屋感あふれる設えの宿でしたが、2005年に新築改装工事を完了し、秘湯宿とは思えない建物に生まれ変わりました。「山にありながら清潔感ある宿」を意識し全13室にウォシュレット付きトイレを備えています。
館内にはWi-Fiもあり電波はバッチリ。秘湯ですが、普段と変わらずインターネットを見たり、SNSを更新したりできます。
山菜が自慢! 名物の鯉と米沢牛も堪能できる夕食
夕食は宿自慢の山菜を中心に、米沢の味ABCのうちの2つBeef(米沢牛)とCarp(米沢鯉)を楽しめます。
夕飯は5時30分スタートなので、3時のお菓子は我慢してお腹を空かせておいたほうがいいかもしれません。
7.3つの源泉4つの浴槽 滑川温泉
姥湯温泉に向かう山道の途中、姥湯温泉の約4キロメートル手前にあります。細い山道なので、自家用車で向かう場合は注意が必要です(送迎サービスあり)。
滑川温泉は、日本の滝100選に選ばれた滑川大滝をはじめとする滝や川と、奥深い山の緑が作り出す美しい自然の中にあります。
温泉が発見されたのは1476年のこと。地元の郷士が川を渡ろうと岩に足をのせたところ、滑って転んでしまいました。そのときに温かい石を感じ、温泉を発見しました。川で滑って見つけたので、滑川温泉。
滑川温泉唯一の宿が「福島屋」。1763年開湯の老舗宿です。
3つの源泉を贅沢にかけ流すお風呂が特徴。2024年にリニューアルしたモダンな部屋から、江戸時代の建物をそのまま使っている趣ある部屋まで豊富なプランから選べます。
冬期休業ですので、訪問時期には気をつけてください。
3つの源泉かけ流し。弱酸性のまろやか硫黄泉
泉質 | 含硫黄 - ナトリウム・カルシウム -硫酸塩・炭酸水素塩温泉 |
源泉温度 | 源泉温度:40.4~53.6℃ |
温度調整 | 無加温無加水 |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | 動脈硬化症・切傷・火傷・慢性皮膚病など |
「福島屋」では、3つの源泉を4つの浴槽に注いでいます。全て源泉かけ流し。気温が高い日は湯温も熱く、雨が降れば少しぬるくなる、自然そのままの温泉が楽しめます。
浴場は岩風呂、ヒノキ風呂、大浴場、女性専用内風呂があります。
温泉の色は青みがかった白色ですが、その日、その時間によって透明になることも。連泊すると「今日は色が違うなあ」という楽しみ方ができるかも?
現代と江戸時代が融合した宿泊棟・自炊棟
「福島屋」は全25室。
1泊2食付きが基本の宿泊棟と、自炊湯治に使う自炊棟に分かれています。
宿泊棟プラン
宿泊棟の部屋は大きく3種類。2024年にリニューアルした和モダンな客室、トイレ付客室、トイレ無し客室。好みや予算に応じて選べます。
自炊棟プラン
自炊棟は江戸時代の建物をそのまま使っている、昔ながらの素朴なお部屋。客室と寝具、調理器具のみが用意されています。食材などを自由に持ち込んで、暮らすように滞在できます。
2名1室の場合で、1人あたり3850円(税込・2025年現在)。連泊だと少しお得になります。
夕飯は地元食材の和食 or フレンチコース料理
「福島屋」の夕飯は、山菜や川魚をメインにした和食と、地元フレンチレストランのコース料理の2種類。秘境宿といえば地の物を使った和食という概念をくつがえします。
「秘湯は好きだけど、山と川の幸は食べ飽きちゃったな」という方もこれなら安心です。
米沢牛のしゃぶしゃぶをオプションでつけることもできます(要予約)。
ファンの力で再び見れるようになった滑川大滝
日本の滝100選に選ばれた「滑川大滝」。「福島屋」の前を流れる清流「前川」にかかる吊り橋を渡り登山道を20分ほど進むと、落差100メートルの雄大な大滝が姿を現します。
今ではアクセスできるようになった「滑川大滝」ですが、実は「前川」にかかる吊り橋が老朽化のため通行できなくなり、2022年までアクセスがほぼ不可能になっていました。
「福島屋」は、この絶景をこのまま埋もれさせてしまうのは非常に惜しいとクラウドファンディングを実施。2022年7月に橋の修理が完了しました。
滑川温泉と滑川大滝を好きな人々によって成し遂げられた大工事。人々の心を動かす魅力がこの地に溢れています。
8.眺望抜群! 2023年OPEN 秘湯×キャンプの特別な1日 五色温泉
2020年、五色温泉の一軒宿であった「宗川旅館」が後継者不足で閉業。五色温泉が米沢八湯から消え、米沢七湯になるかと思われました。
しかし、この温泉を守りたいという事業者が土地と建物を取得。約1億5,000万円の費用をかけ、大浴場とサウナを備えたオートキャンプ場にリニューアル。2023年に日帰り入浴を開始し、2024年にキャンプ場をオープンしました。
個性豊かな米沢八湯の中でも、五色温泉は秘湯×キャンプの特別な体験ができる場所です。
他の秘湯の例にもれず、冬期休業なのでお気をつけください。
遠くを見ながらボーっとする。そんな過ごし方が似合う温泉
泉質 | ナトリウム・カルシウム - 炭酸水素塩・塩化物温泉 |
源泉温度 | 46℃ |
温度調整 | 無加温無加水 |
利用方式 | 源泉かけ流し |
効能 | 慢性婦人病・胃腸病・虚弱児童・慢性皮膚病など |
開湯は1300年以上前の飛鳥時代、修験道の開祖とされる役小角(えんのおづぬ)が発見したという伝説が残っています。
戦国~江戸時代には直江兼続が息子の療養に使い、その後は上杉家ゆかりの湯治場として名声を得ました。
1911年には日本初の民営スキー場が開業。皇族や華族も利用するなど、日本有数のスキー場・保養地になりました。
華々しい歴史に彩られる五色温泉ですが、今は落ち着いた温泉地。標高は800メートルとそこまで高くありませんが、北側が開けていて眺望は抜群。遥か遠くの山々を見ながらのんびりしたい、という人にオススメ。
大浴場には大きな窓が設置され、まるで絵画のように雄大な山景色を切り取っています。
お風呂上りはウッドデッキでハンモックに揺られながら、心地よい風で火照った身体を整えることができます。
完全予約制のフィンランド式サウナで整う
ウェーデンの老舗サウナブランド「TYLO」のセルフロウリュウができるサウナが2室あり、広大な山々の景色を見ながらサウナを楽しめます(温泉とは別料金)。
北欧のサウナのように、室温は80度前後。ロウリュウにより湿度をあげて心地よく身体を温めることができます。
水風呂は地下水を利用しているので、年間を通して10℃~15℃で安定しています。
1回90分利用、最大4名の完全予約制で、10時、12時、14時、16時、18時の回があります。
サウナの木の香りだけでなく、シトラス・ペパーミント・ユーカリ・ラベンダーのエッセンシャルオイルを日替わりで用意。一味違うサウナ体験を楽しめます。
手ぶらでOK! 初心者から上級者までスタイルに合わせた18のサイト
五色温泉オートキャンプ場には備え付けの宿泊施設はありません。宿泊はキャンプだけです。キャンプ用品はレンタルもしているので、キャンプ初心者も手ぶらでOK!
サイトの大きさや設備、管理棟までの距離によって細かく料金が設定されているので、自分たちのスタイルに合わせてキャンプサイトを選べるのが嬉しいポイント! 中には、皇族の別荘があった六華倶楽部の跡地を活用した特別なプライベートサイトも。
どのサイトに泊まっても温泉入浴料金込み! 何度入浴しても追加料金はかかりません。
雄大な景色を眺めながらゆったりし、何回も温泉に入る。そんな贅沢がここにあります。
レンガ倉庫を改築したエモい管理棟と充実の設備・アメニティ
五色温泉のリニューアルオープンにあたって、旅館の建物は1つを除いて全て解体されました。唯一残ったのが「レンガ倉庫」。長い年月を経たレンガや骨組み・鉄扉・格子窓などが醸し出す味わいは歴史が磨き上げた結晶。リノベーションした内部は、木の素朴さと照明の優しい光で演出しています。
管理棟はカフェやショップの機能も備えていて、軽食を食べたり、キャンプ用品のレンタルができます。キャンプに必要なものは基本的に買える(レンタルできる)ので忘れ物をしても安心です。
また、五色温泉オートキャンプ場はアメニティが充実しているのも特徴。
脱衣所にはドライヤーはもちろん、化粧水、乳液、洗顔フォーム、歯ブラシなどが用意されています。
トイレはおむつ替えができる大きな個室も!
山奥の秘湯・秘境ですが、不自由なく過ごせます。
更新日:2025年07月18日