(更新日:令和3年10月5日)
「鯉流し」 谷野 隆(山口県山陽小野田市) 「防府市で行われた鯉流しの一コマです。鯉がからまない様に船頭さんがサオで調節しています。」(山口県防府市/令和元年5月4日撮影) 【講評】 写真家で秋山庄太郎とともに二科会写真部創立会員をつとめた畏友・林忠彦さん(1918~1990)ゆかりの周南市はこの市のお隣です。 山口県のほぼ中央部を南方に流れる一級河川「佐波川」(さばがわ)。防府市(小野地区)では、2008年からゴールデンウイークに「佐波川 こいのぼりの川流し」略して「こいながし」が催されてきました。元々は川の中ではなく、空中を泳がせる企画であったものが、川幅が広 かったためにうまくいかず、このスタイルになったとか。今年は残念ながら中止となりましたが、毎年、県内外からたくさんの観光客や写 真愛好家の皆さんたちで賑わう風物詩ともなっています。 本作品は、鯉幟や吹流しの流れるさまや彩り、空を映し出す水面の色合いや紋様、それらの中に菅傘を被った船頭さんの操る木舟が心地 よい配置になっています。ただ描写しただけではないすてきな仕上がりになっていると思います。
該当者なし
「冬将軍がやってきた」 鳥居 秀行(山形県山形市) 「残り柿がまだたくさんなっているのに大雪が降り始めました。白の世界に柿色が目立ちます。」(山形県大石田町/令和元年12月5日撮影) 【講評】 秋山庄太郎は正月を米沢で迎えるため、クリスマスが過ぎる頃になると、お弟子さんか家族の運転する車で、愛犬を連れて米沢市松が岬 にあるアトリエ(別荘)山粧亭にやってきました。囲炉裏で暖をとりながら、三々五々集まってくる米沢の写真愛好家の皆さんと、芋煮や郷 土料理に舌鼓、写真談義を肴に、夜更けまで持ち寄った酒を酌み交わしました。そして、滞在中はフォトジェニックな「残り柿」の風景撮 影もたのしみにしていました。 作品はやがて一面銀世界となっていくことを想像させられるとともに、勢いよく降る雪で柿がいつまで耐えられるかを考えさせるような ところがあります。柿の色と雪雲からかすかに透けて見える光が味わい深い効果をもたらしている印象です。
「峠の売り子」 上野 貴道(福島県河沼郡湯川村) 「列車が入ってくると売り子は運転士に一礼して名物の力餅を買い求めるお客さんの対応をしていた。昔はどこでも見れた光景だったと思う。 この文化はなくならないでほしいと思います。」(令和3年7月25日撮影) 【講評】 米沢駅から奥羽本線に乗って18分ほど、福島駅からは30分ほどの所にある峠駅。この無人駅停車中のわずか30秒内の「買い物」がしたくて、 福島からは在来線で米沢に向かう審査員もいます。列車から売り子さんを見ることはあっても、売り子さんの側から入線してくる米沢発福島行 きを見ることはあまりないのではないでしょうか。モノクロームであることが、レトロな効果とともに、時空を超えて心に染みてくるような雰 囲気を醸し出していると思います。