城下町ふらり歴史探訪

 歴史探訪は米沢に残る遺跡などをわかりやすく説明したもので、平成5年4月から平成10年4月まで広報よねざわに連載されものを収録しています。

風の神 城北2丁目
 風邪を防ぐ珍しい神様

 今月は、米沢区検察庁(城北二丁目)の敷地内に建つ「風の神」を紹介します。
 検察庁内に神様が祀られている事は、大変珍しいことです。これは、検察庁敷地が江戸時代は夏井家の屋敷のあった場所で、夏井家の屋敷神であった風の神が、訳あってそのまま残ったためです。
 夏井家は元は会津の芦名氏の家臣で、夏井城(福島県耶麻郡高郷村)に住んでいました。芦名氏が伊達氏に滅ぼされた後、直江兼続をたより米沢に来て、上杉の家臣となりました。さて、夏井家に伝わる風の神の伝説は次のとおりです。
 天正年間のある年の大晦日、夏井の館に貧しげな僧が一晩の宿を願ってやってきました。主人は、かわいそうに思い、僧を泊め料理と酒でもてなしたところ、翌元旦、僧は「実は自分は人間ではない。風の神(疫癘神)である。昨晩のお礼に、この家に疫癘(はやり病)が入らないように」といって、梵字の呪文を書いたお札を残し、姿を消しました。その後、夏井家では館内に風の神を祀るお堂を建て、米沢に移ってからもお堂に祀りました。
 ところが、明治になって夏井家が他の町に移転したところ不幸が重なり、夏井家では風の神を移した祟りと思い、元の場所に風の神を分霊し、町内会で祀ってもらうよう頼みました。
 風の神は、風邪を防ぐ神様として信仰されていたので、町内会では別当を舘山口町の千勝院に依頼し、お札を配り、祭りを続けました。昭和になってからは風の神講を作り、昭和24年には新たに御輿を作り盛大な祭りを行いました。この御輿行列は交通問題もあって中止となり、御輿は昭和41年に上杉博物館に寄贈され収蔵されています。
 昭和25年、この夏井家の屋敷跡に検察庁が建つこととなりましたが、こうした理由で、特別にお堂がそのまま残されたのです。 昔は「大根二本を神前にお供えし、前の人が供えた大根一本をもらい、それを家族で食べると風邪に罹らない」といって、大根がお供えされていましたが、現在はその名残りなのでしょうか、大根2本を描いた絵馬が掛けられています。


風の神